昨年1年間はコロナウィルス感染症のため対面授業が大幅に制限され,メディア授業であったことから,上手くいかない,面白くないという方が結構,おられるのではないかと思います。
以下は,上手くいっている方には関係のない話しなります。上手くいかないと思っている方に,少しのヒントになれば幸いです。
まず,上手くいっている方というのは,「勉強時間と成績が比例している方」です。上手くいかない方というのは,「勉強時間と成績が比例しない方」,すなわち「他者と比べても勉強時間が劣っているわけでないのに,成績が良くない方」です。
勉強時間が負けて成績も悪いのは当たり前ですので,その場合は,諦めて時間を費やして勉強してくださいとしか言いようがありません。
他方,勉強時間では負けていないのに上手くいかない方は,少々刺激的な表現ですいませんが,危険です。このまま勉強を続けても,改善する可能性が低いと言わざるを得ません。どこか「方法」にズレがあると考えられ,このまま「量」を増やしても,成果があがることは期待薄です。特に,「定評のある○○本を,○回読んでやりこんだのに。」と考えている方は注意が必要です。
「○○本」,「○回」に囚われていませんか?大切なのは,そこではなく,どう「やりこんだ」か,すなわち,どのような読み方をして,そこから何を吸収し,理解して身につけたのかです。
何を「やりこむ」かですが,初学者は「法律知識」を理解することが必要だと思います。ここで大切なのは,法律知識を「覚える」ことではなく,「理解」することです。定義,論証,判例要旨を暗記だけして済まそうとしていませんか?もちろん理解の前提として覚えることが必要ですが,それだけだと,同じ問題であれば答えられるでしょうが,事案が変わると途端に分からなくなってしまい,無理矢理,同じ点を見つけて「同じだ。」と言い張り,暗記したものをそのまま吐き出すことになってしまいます。ところが,だいたいの問題は,「覚えたことを前提に,異なる点を見出し,そこをどう考えますか。」を聞いてきます。異なる点に目をつぶると,出題趣旨に答えていないことになります。この「異なる点」に答えるためには,覚えた知識を理解しておく必要があります。自分で腹落ちしていないことは,他者に説明することはできません。なぜそう考えるのかを理解し,覚えることが大切です。
個々の法律知識を「やりこんだ」ら,次は,それらの法律知識の法体系の中での位置づけ,相互関係を有機的に結ぶ,連結器としての横断的理解とその法での考え方(アルゴリズム)を「覚え」,「理解」することが必要になります。
これでインプットが完了しますので,その次は,これを「使いこなす」,すなわち,表現する力を磨くことなります。
上手くいかないと感じている方は,表現力以前の,「やりこむ」にズレがある可能性が高いと思います。
抽象論は分かったけど,どうすればとよいのかを考えてみます。
「やりこみ」のズレを修正するのに,今までと同じ方法で,「○○本」を読み込んでも効果は期待できません。
まず,その本のレベルは貴方にあっていますか?書いてある内容が理解できますか?分からない内容を分からない本で読んでも時間の浪費です。例えは悪いですが,赤ちゃんが成長するためにステーキを与えるでしょうか?消化酵素がありませんから,ステーキを与えても,おなかを下すだけで,成長することはできません。やはり,離乳食を与えて消化できるまで成長してから,ステーキを与えないといけません。ほんとに分からないと感じているときは,もっと簡単な入門的な本を「やりこむ」べきです。それが消化できるようになれば,戻ってくればよいだけです。リークエの民訴,和田先生の民訴が難しいですか?であれば,有斐閣ストゥデイアの民事訴訟法や和田先生のコンパクト版を手に取ってはどうでしょうか。佐久間先生の民法基礎が難しいですか?であれば,道垣内先生のリーガルベイシス民法入門を手に取ってはどうでしょうか。周りは定番を使っており,そんな入門書は恥ずかしい。他人に見せる必要はありませんし,公表する必要もありませんから,黙って使えばよいだけのことです。
それでも分からなければ,法科大学院の最大の資産は教員です。教員に教えを乞うてください。ただし,質問にも作法がありますので,それは守るようにしてください。何もかも教えてくださいではなく,「この点について,自分はこう考えているのですが,それでいいのか。こういう点が腑に落ちません。」と尋ねていただければ,分かるまで徹底的に教えてもらえるはずです。
皆さんは,法科大学院に来られたのは,法をもって社会に貢献したい,活躍したいとの意思をもって来られたと思います。また,それだけではなく,法律学という学問に知的好奇心が少なからずあるはずです。勉強は苦行ではなく,知的好奇心を満たす楽しいもののはずですから,背伸びせずに,自分の消化酵素にあったレベルのことからもう一度手を付けてみませんか?