木曜オフィスアワー番外編(民法) 2015

2015年度番外編問題(民法)

                        出題 千葉恵美子

 【問題】現時点が平成254月であるとして、以下の言い分を読んで、以下の設問に答えなさい。なお、解答にあたっては、亡父をK、母をMと長男(兄)をA長女(姉)をB、次男をCと記載するものとする。

Cの言い分

私の亡父Kの相続に関して、ご相談します。

亡父Kは大津市に住んでいましたが、平成23年7月7日に、75歳で亡くなりました。相続人は、母と長男A(兄)、長女B(姉)、次男である私()の合計4名です。兄は滋賀県庁に勤務しており、姉は和歌山で旅館を営む義兄と結婚して女将をやっています。また、私は設計事務所で一級建築士をしています。

父は難病指定されている筋萎縮性側索硬化症という病気になり、大津市には、当時専門医がいなかったことや症状が悪化してきたことから、平成22年4月初旬に、京都市内の専門医のいる病院に入院しました。しかし、一度も退院することはできないまま亡くなりました。

母は体調がすぐれず、父が入院した時に、和歌山の姉のところに身を寄せておりました。父が死亡した後、母はさらに病状が悪化して入院するに至りました。

父母と兄家族は、大津市内にある甲土地(200坪、時価3000万円)の上に、二棟の建物を建て、甲土地の東半分にある母屋に父母が、西半分にある離れに兄とその家族が住んでいました。

母屋(時価1000万円)は、昭和59年の建設で、父の名義で保存登記がされています。離れは、平成10年に建設され、兄の名義で保存登記がされています。建築資金1000万円は兄自身が負担したようです。

父は、自宅の隣に所有する乙土地(500坪、時価5000万円)を花井土木という建設会社に、平成10年7月1日に、建物所有を目的として期間10年、年額240万円の賃料で貸しており、平成20年7月1日に、同じ条件で契約が更新されています。花井土木は乙土地に事務所建物(200坪)を所有しているほか、ダンプや重機などの駐車場と資材置き場として利用しています。地代の振込み用に開設したS銀行の父名義の預金口座に、年額240万円が毎年6月末に振り込まれており、平成24年6月30日にも一年分の地代の振込みがありました。現在、これまで振り込まれた賃料の残額960万円とあわせると預金残高は1200万円になります。

このほか、父は祖父から相続した丙地(300坪、時価3000万円)を所有しており、現在は、更地になっています。

ところで、花井土木は、父が設立した会社なのですが、兄が会社を継がなかったことから、後継者がおらず、取引銀行であるU銀行のお世話で、父は、平成19年にM&Aによって花井土木を売却しました。この売却代金の一部で、父は有料老人ホームの利用権を購入たようです。設備や介護サービスも充実しており、医師も常駐しているとのことで、もう少し体力が弱ってきたら、母とともに暮らすことにしていたようです。売却代金の残額3000万円については、U銀行に定期預金をしてあると母から聞いています。

私が心配をしているのは、父が連帯保証人となっていることです。父は花井土木の代表取締役社長をしていた時に、花井土木のU銀行に対する債務について、現在および将来U銀行から借り入れを受ける際に、連帯して保証するという内容の契約をしていたようです。父は、花井土木を売却した時に、引き続き花井土木の相談役を務めることにした関係で、平成19年4月1日に、期間を5年、現在および将来花井土木がU銀行から借り入れを受ける際に、極度額5000万円の限度で連帯して保証するとする契約を締結したようです。契約内容については、書面の写しが手元にあります。父が死亡した時点でU銀行から花井土木の借入金は3000万円、平成25年4月1日時点で4800万円となっています。

また、大変お恥ずかしい話ですが、父の一周忌の法要が終わってから、父の遺産をめぐって兄ともめてしまいました。兄は、父の了解を得て、甲土地の西半分を利用してそこに自宅を建てたことはお話をしたとおりですが、母は和歌山の姉のところに身を寄せていましたので、父と母が住んでいた母屋が空き家になっていました。平成22年6月頃から兄はこの母屋に夫婦で住み、離れには兄の息子夫婦が住んでいます。甲土地も母屋も自分の物のように使っている兄には腹が立ちます。

私は、平成23年4月に東京の設計事務所から独立して京都市内に自分の事務所を開いたのですが、大津に事務所を移したいと考えており、この母屋の一部に自分の設計事務所を開設したいと思っています。姉に相談したところ、母も賛成してくれるだろうといって、姉が了解してくれました。

 

Aの言い分

私が滋賀県庁に勤務している関係で、両親の家と「スープの冷めない距離」に住んで、父と母をずっと見守ってきました。父が京都の病院に入院してからは、1年以上も1日おきに、大津から京都まで通って、入院した父の身のまわりの世話や看病したのは、私の妻です。父が入院してから、母は和歌山の妹のところに身を寄せることになりましたが、それは、妻が看病のために、大津と京都の間を行ったり来たりしていたからです。

弟は私が甲土地や母屋を勝手に使っているようにいいますが、私がマイホームを建設しようと思っていたときに、父が「甲土地の半分が空き地になっているんだから、ここに建ててくれると、私も母さんも安心だ。」といってくれたので、今の場所に自宅を建てたのです。確かに、地代を支払っていません。しかし、それは、父が、地代など受け取ることができないといったためです。

父が入院する半年前に私の息子が結婚して離れに同居していました。離れに2所帯は狭いので、空き家になっていた母屋をわれわれ夫婦が利用し、息子夫婦が離れを利用することにしました。母に了解をとったわけではありませんが、文句を言うはずはありません。これまで、私は長男としての責任を十分果たしてきたと思います。妹も弟も、仕事が忙しいといって、月に1度しか父の見舞いに来ませんでした。

 

<Bの言い分>

母が私のもとに身を寄せたのは、兄の妻との折り合いが悪くなったためです。隣に兄夫婦が住んでいるのに、面倒をみてくれず、父が京都で入院するまで4年余りの間、母が1人で父の看護、介護をしていました。そのうちに、母はすっかり体調をくずしたようです。父と母は花井土木からの地代と年金、それにこれまで蓄えた預貯金で生活費を賄ってきましたので、兄夫婦が経済的に父母の面倒をみてきたわけではありません。私と暮らすようになってからも、母は年金の振込み用の郵便貯金とS銀行およびU銀行の父名義の預金については、自分で管理していました。

平成23年12月中旬に、母の病気が悪化して入院し、それ以降は、私が母の財産を管理しています。

平成243月に、弟と甲土地の利用方法について相談し、母屋については弟に設計事務所として利用させると決めました。

<Mの言い分>

夫の介護疲れで持病が悪化し、私のことを心配した長女が自分のところで生活するように言ってくれましたので、平成22年5月から和歌山の長女のところで生活をしております。とても腹が立っているのは、私がもう大津に戻ってくるはずはないと思っているのか、長男夫婦が母屋を自分の物のように利用していることです。何度か電話をしたのですが、私に何の挨拶もなく、長男は私の荷物を長女宛に送ると言いました。母屋の名義は夫となっていますが、永年夫と生活をした家であり、長男夫婦が母屋を自分の物のように利用できるようなものではありません。

夫の死亡後、私は持病の糖尿病が悪化して、平成23年12月15日に和歌山市内の病院に入院しました。長女が親身になって私の看病をしてくれていますので、入院してからは長女に私の財産の管理はすべて任せることにしました。長女に郵便貯金通帳とS銀行の預金通帳・カード・印鑑などを預かってもらっています。また、入院が長期になりそうでしたので、平成24年2月1日に、「私は自分の財産の管理について長女に一任する」旨の委任状を作成し、署名・捺印をして長女に渡しました。

 

設問1 次の小問に答えなさい。なお、小問2)の検討にあっては、小問1)を考慮しないこと。

1) 平成24年2月頃、A夫婦の態度に腹がったMは、Aに対して甲土地上にある母屋の明渡しを求めたいと考えた。上記MABCの言い分を前提として、Mは、どのような法的根拠に基づいて請求することができるか、考えられる法的根拠を示して、その法的根拠が成り立つ理由を説明しなさい。

2) Cは、平成25年4月、Aに対して、甲土地上にある母屋の共有者であることに基づき、その明渡しを求めて訴訟を提起した。上記MABCの言い分を前提として、Aから反論として「自分も共同相続人の一人である」と主張がされた場合に、Bの言い分のうち、下線部の事実の主張について,攻撃防御方法の位置づけを検討した上で,同主張が認められるかどうか、理由を付して説明しなさい。

 設問2 平成24年4月頃から、Cは15歳ほど年下の女性Dと親密な関係にあった。DはEと婚姻していたが、1年前から別居していた。DとEは離婚について協議中であったが、Eから「勝手に家を出て行ったのは、君だ。慰謝料でも支払ってくれるのであれば離婚に応じてもよい。金も財産もないのに、離婚だって。よくもそんなことをぬけぬけといえるものだ。」と言われた。

DEの話し合いの内容を聞いたCは、Dと婚姻したいと考えていたことから、丙地について共同相続登記を経由した上、Dと相談して、丙土地のCの持分について売買を原因としてDへ移転し、DがEに慰謝料を支払う原資があることを示して、Eとの離婚協議をさせることにした。もちろんCには丙地をDに売るつもりはなかった。

しかし、Cから上記の経緯を聞いたBは、DEが共謀してCを騙し丙地を手に入れようとしているのではないかと心配している。BがDに対してDの持分移転登記の抹消登記を求めて訴えを提起した場合,同請求は認められるか。

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