短答式試験問題による重要基礎知識確認 講評(憲法)

短答式試験問題による重要基礎知識確認 講評(憲法)

1. 総 評

① 過去問を用いている割には正答率が低い者がいる。択一3科目時代に突入している現在、得点率80%が目安となることを肝に銘じてほしい。基本書レベル・百選レベルの理解と、近年の判例動向がフォローできていれば十分に達するはずである。

② ただし、今年度の出題傾向からは、教科書や百選登載判例を表面的にフォローしていれば足りるというのではなく、その論理や意味について理解しておくべきだというメッセージが受け取れる。この点は、今後の勉強の際にも注意すべきだろう。

② 傾向として、統治分野での得点ができていない者は、総得点が伸びない傾向にある。統治は論文対策でも勉強する人権に比べるとおろそかになりがちだが、しっかりとフォローしてほしい。

2.正答率が悪かった選択肢(正答率60%以下)に関する解説

① 第7問 マーク13 解答:8(×○×) (正答率 52.9%)

ア 最判17・7・14 図書館図書廃棄事件 百選Ⅰ-74

「公立図書館が,住民に図書館資料を提供するための公的な場であるとすれば,そこで閲覧に供される図書の著作者にとっても,その思想,意見等を公衆に伝達する公的な場であるということができるところ,そのような公的な場である公立図書館において閲覧に供されている図書を図書館職員において独断的な評価や個人的な好みによってこれを廃棄するなど不公正な取扱いをすることは,当該著作者が公立図書館という公的な場においてその著作物の思想,意見等を公衆に伝達する利益を合理的な理由なしに損なうものといわなければならず,したがって,公立図書館において,その著作物が閲覧に供されることにより,著作者は,その著作物について,合理的な理由なしに不公正な取扱いを受けないという上記の利益を取得するのであり,この利益は,法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり,公立図書館の図書館職員である公務員が,図書の廃棄について,基本的な職務上の義務に反し,著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは,当該図書の著作者の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となる」

イ. 最判平成16・11・25 NHK生活ほっとモーニング事件 判プラ118

法4条1項は,真実でない事項の放送について被害者から請求があった場合に,放送事業者に対して訂正放送等を義務付けるものであるが,この請求や義務の性質については,法の全体的な枠組みと趣旨を踏まえて解釈する必要がある。憲法21条が規定する表現の自由の保障の下において,法1条は,「放送が国民に最大限に普及されて,その効用をもたらすことを保障すること」(1号),「放送の不偏不党,真実及び自律を保障することによって,放送による表現の自由を確保すること」(2号),「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって,放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」(3号)という三つの原則に従って,放送を公共の福祉に適合するように規律し,その健全な発達を図ることを法の目的とすると規定しており,f法3条は,上記の表現の自由及び放送の自律性の保障の理念を具体化し,「放送番組は,法律に定める権限に基く場合でなければ,何人からも干渉され,又は規律されることがない」として,放送番組編集の自由を規定している。すなわち,別に法律で定める権限に基づく場合でなければ,他からの放送番組編集への関与は許されないのである。法4条1項も,これらの規定を受けたものであって,上記の放送の自律性の保障の理念を踏まえた上で,上記の真実性の保障の理念を具体化するための規定であると解される。そして,このことに加え,法4条1項自体をみても,放送をした事項が真実でないことが放送事業者に判明したときに訂正放送等を行うことを義務付けているだけであって,訂正放送等に関する裁判所の関与を規定していないこと,同項所定の義務違反について罰則が定められていること等を併せ考えると,同項は,真実でない事項の放送がされた場合において,放送内容の真実性の保障及び他からの干渉を排除することによる表現の自由の確保の観点から,放送事業者に対し,自律的に訂正放送等を行うことを国民全体に対する公法上の義務として定めたものであって,被害者に対して訂正放送等を求める私法上の請求権を付与する趣旨の規定ではないと解するのが相当である。前記のとおり、法4条1項は被害者からの訂正放送等の請求について規定しているが,同条2項の規定内容を併せ考えると,これは,同請求を,放送事業者が当該放送の真実性に関する調査及び訂正放送等を行うための端緒と位置付けているものと解するのが相当であって,これをもって,上記の私法上の請求権の根拠と解することはできない。」

ウ. 最大判昭和35・7・20 東京都公安条例事件 百選Ⅰ-A4 判プラ90

「規制の対象となる集団行動が行われる場所に関し、原判決は、本条例が集会若しくは集団行進については「道路その他公共の場所」、集団示威運動については「場所のいかんを問わず」というふうに、一般的にまたは一般的に近い制限をなしているから、制限が具体性を欠き不明確であると批判する。しかしいやしくも集団行動を法的に規制する必要があるとするなら、集団行動が行われ得るような場所をある程度包括的にかかげ、またはその行われる場所の如何を問わないものとすることは止むを得ない次第であり、他の条例において見受けられるような、本条例よりも幾分詳細な規準(例えば「道路公園その他公衆の自由に交通することができる場所」というごとき)を示していないからといつて、これを以て本条例が違憲、無効である理由とすることはできない。なお集団的示威運動が「場所のいかんを問わず」として一般的に制限されているにしても、かような運動が公衆の利用と全く無関係な場所において行われることは、運動の性質上想像できないところであり、これを論議することは全く実益がない。」

解説 本問の肢はそれぞれ、百選のうちでは少しマイナーなものや百選には搭載されていない判例について、その論理構造や言い回しに関する知識を問うものであった。27年度の短答式のひとつの特徴は、このような基本書や判例の「すこしだけ踏み込んだ理解」についても尋ねている点にある。その意味で、このレベルの問題にもぜひ正答したいところではある(ただ、三つの肢すべてについて正答が求められるので、ハードルは高いかもしれない)。すこし細かすぎるきらいがないではないが、しかし、本問で取り上げられている判例はいずれも論述式でも出題されうる分野であり、この程度の理解がなければ論述式の方がおぼつかなくなると思われる。

② 第10問 マーク20 正答2(×) (正答率 58.8%)

ウ 最判平成24・2・28 老齢加算廃止訴訟 判プラ227-2

「老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定は,〔1〕当該改定の時点において70歳以上の高齢者には老齢加算に見合う特別な需要が認められず,高齢者に係る当該改定後の生活扶助基準の内容が高齢者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に,最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤,欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合,あるいは,〔2〕老齢加算の廃止に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に,被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に,生活保護法3条,8条2項の規定に違反し,違法となるものというべきである。」

解説 本問は老齢加算廃止訴訟の最判が扱われている。これは百選非搭載であるが、しかし、重要判例であることは否定できない。また、本判例についてはいわゆる判断過程統制の可能性について言及する部分に注目が集まっているが、本問で聞かれているのは、もう一つの期待的利益の保護の文脈である。期待的利益については、本判決は、「老齢加算の廃止は,これが支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者に関しては,保護基準によって具体化されていたその期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ない」と述べており、法的権利とは言っていない。しかしながら、それでも、裁量権の逸脱濫用の可能性がありうる(その意味で司法審査の可能性を留保)しているところがミソなわけである。

③ 第11問 マーク21 正答21(○○×) (正答率 47.1%)

最判平成23・11・16 裁判員制度合憲判決 百選Ⅱ-181

国民の司法参加と適正な刑事裁判を実現するための諸原則とは,十分調和させることが可能であり,憲法上国民の司法参加がおよそ禁じられていると解すべき理由はなく,国民の司法参加に係る制度の合憲性は,具体的に設けられた制度が,適正な刑事裁判を実現するための諸原則に抵触するか否かによって決せられるべきものである。換言すれば,憲法は,一般的には国民の司法参加を許容しており,これを採用する場合には,上記の諸原則が確保されている限り,陪審制とするか参審制とするかを含め,その内容を立法政策に委ねていると解される」

「憲法76条3項によれば,裁判官は憲法及び法律に拘束される。そうすると,既に述べたとおり,憲法が一般的に国民の司法参加を許容しており,裁判員法が憲法に適合するようにこれを法制化したものである以上,裁判員法が規定する評決制度の下で,裁判官が時に自らの意見と異なる結論に従わざるを得ない場合があるとしても,それは憲法に適合する法律に拘束される結果であるから,同項違反との評価を受ける余地はない。元来,憲法76条3項は,裁判官の職権行使の独立性を保障することにより,他からの干渉や圧力を受けることなく,裁判が法に基づき公正中立に行われることを保障しようとするものであるが,裁判員制度の下においても,法令の解釈に係る判断や訴訟手続に関する判断を裁判官の権限にするなど,裁判官を裁判の基本的な担い手として,法に基づく公正中立な裁判の実現が図られており,こうした点からも,裁判員制度は,同項の趣旨に反するものではない。」

「このように,裁判員の職務等は,司法権の行使に対する国民の参加という点で参政権と同様の権限を国民に付与するものであり,これを「苦役」ということは必ずしも適切ではない。また,裁判員法16条は,国民の負担を過重にしないという観点から,裁判員となることを辞退できる者を類型的に規定し,さらに同条8号及び同号に基づく政令においては,個々人の事情を踏まえて,裁判員の職務等を行うことにより自己又は第三者に身体上,精神上又は経済上の重大な不利益が生ずると認めるに足りる相当な理由がある場合には辞退を認めるなど,辞退に関し柔軟な制度を設けている。加えて,出頭した裁判員又は裁判員候補者に対する旅費,日当等の支給により負担を軽減するための経済的措置が講じられている(11条,29条2項)。」

解説 本問は裁判員制度合憲判決である。百選登載判例であり、かつ、司法権は、統治のところでは貴重な判例形成のみられる分野であるから、重要判例は十分に習得すべきである。もっとも、本問では、同判決の判示項目を網羅的に尋ねており、その点では、本問についても①の解説が妥当する。

④ 第17問 マーク31 正答7(○○○) 正答率 35.8%

解説 本問は、定数訴訟という著名判例群を問いつつも、いわゆる「違憲判決の後始末」にかかわる論点を尋ねている。近年、学説・実務ともに注目の高い分野ではあるが、まだ基本書レベルで丁寧に言及する例が少なく、若干難しかったかもしれない。この論点については、定数訴訟の各判決を少数意見まで含めて丁寧に読み込むことのほか、長谷部恭男「投票価値の格差を理由とする選挙無効判決の帰結」法教380 号(2012 年)38 頁以下などが参考になる。

このような近年話題の論点については、論ジュリ、法セミ、法時、法教などを読んでいる学生とそうでない学生とで差がつくように思われる。このレベルまで追いかけるのは、憲法以外の科目もあることを考えると、容易ではない。他方で、この手の問題を捨て問にするのであれば、基本書、判例レベルについては、完璧に近い学習が求められることになろう。

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